SNSで拡散される画像や動画、その真偽を確かめる実践的な確認方法
SNSは私たちの生活に欠かせない情報源ですが、時には誤った情報や意図的なフェイクが画像や動画として拡散されることがあります。災害時のデマや健康に関する誤情報など、その内容は多岐にわたり、何が真実で何がそうではないのか、判断に迷う場面も少なくありません。
このページでは、SNSで目にする画像や動画の真偽を見極めるための、具体的で実践的な確認方法をご紹介します。専門知識がなくてもすぐに始められる方法を中心に解説いたしますので、日々の情報収集に役立てていただければ幸いです。
SNSの画像や動画の真偽を見極める重要性
SNS上の情報には、個人の体験談や意見、エンターテインメントなど多様な内容が含まれます。その中で、事実に基づかない情報や加工された画像・動画が無批判に拡散されると、社会に混乱を招いたり、人々に不必要な不安を与えたりする可能性があります。
特に視覚情報は、人々の感情に強く訴えかけ、信じやすいという特性があります。そのため、安易に信じたり共有したりする前に、一度立ち止まってその真偽を確かめる習慣を持つことが大切です。
画像の真偽を確かめる具体的なステップ
まずは、SNSで目にした画像について、その信頼性を確認するための具体的な手順を見ていきましょう。
1. 逆画像検索の活用
画像がいつ、どこで、どのような文脈で公開されたものかを確認する最も基本的な方法の一つが「逆画像検索」です。これは、特定の画像をインターネット上で検索し、その画像が過去にアップロードされたウェブページや、類似の画像を見つけ出す手法です。
具体的なツールと使い方: * Google画像検索: Google検索バーのカメラアイコンをクリックするか、画像を直接ドラッグ&ドロップすることで検索できます。 * TinEye: 画像のアップロードまたはURL入力で検索が可能です。Googleとは異なる独自のデータベースを持っており、より古い画像の出所を見つけるのに役立つ場合があります。
確認するポイント: * 過去の公開状況: 同じ画像が過去に別の文脈で使われていないかを確認します。もし異なる内容の記事や古い日付で使われていた場合、現在の情報とは無関係の画像である可能性があります。 * 元の出所: その画像が最初に投稿されたと思われるウェブサイトやアカウントを探します。信頼できる報道機関や公式アカウントからのものであれば、信頼性が高まります。
2. 画像の不自然な点や加工の痕跡を確認する
専門的な画像編集ソフトがなくても、違和感に気づくことでフェイクを見破れることがあります。
確認するポイント: * 不自然な影や光の方向: 複数の光源があるように見えたり、影の方向が一貫していなかったりしないか確認します。 * 解像度や画質の不均一さ: 画像の一部だけが不鮮明だったり、ピクセルが粗かったりする場合、別の画像が合成されている可能性があります。 * 境界線の不自然さ: 人物や物体と背景の境界線がぼやけていたり、不自然なほどシャープすぎたりしないか確認します。 * ありえない状況: 現実的に起こりえないような状況や、物理法則に反する要素がないか冷静に観察します。
3. 撮影日時と場所の確認
画像に付随する情報や、画像そのものから読み取れる情報で、撮影された日時や場所を推測します。
確認するポイント: * Exif情報: デジタルカメラで撮影された画像には、撮影日時やカメラの機種、設定などの情報(Exif情報)が含まれている場合があります。ただし、SNSにアップロードされる際に削除されることも多いため、常に確認できるわけではありません。専門のツールやウェブサービスで確認を試みることができます。 * 背景の建物や風景: 画像に写り込んでいる建物、ランドマーク、植生などから、場所を特定できる場合があります。季節や時間帯を示唆する要素(雪、桜、日没など)も重要な手がかりです。 * 関連情報との照合: 投稿されたキャプションや、関連するニュース記事などから得られる情報と、画像の内容に矛盾がないかを確認します。
動画の真偽を確かめる具体的なステップ
動画は情報量が多く、加工がより複雑であるため、見極めには注意が必要です。
1. 動画をフレーム単位で確認する
動画全体を漠然と見るだけでなく、一時停止して細部を観察することが重要です。
確認するポイント: * 不自然なカットや編集: 突然場面が変わる、人物の動きが不自然に途切れる、ループしているように見えるなどの違和感がないか確認します。 * 音声と映像の同期: 音声と映像がずれていないか、不自然な編集点がないか確認します。 * 対象物の違和感: 画像と同様に、人物の顔や体の不自然な歪み、背景との馴染まなさなどを確認します。ディープフェイクと呼ばれるAIによる合成技術で作成された動画の場合、瞬きが不自然に少なかったり、輪郭が歪んだりすることがあります。
2. 動画の逆検索と出所の確認
動画も画像と同様に、その出所や過去の利用状況を確認することが重要です。
具体的なツールと使い方: * InVID-WeVerify: ブラウザの拡張機能として提供されており、動画のキーフレームを抽出し、逆画像検索をかけることができます。また、動画のメタデータ分析にも役立ちます。 * YouTubeの検索フィルター: YouTubeで動画を探す場合、アップロード日などで絞り込むことで、古い動画が現在のものとして利用されていないか確認できることがあります。
確認するポイント: * 元の動画のアップロード日: 現在の出来事として投稿されている動画が、実際には数年前の古い出来事を写したものだったというケースは少なくありません。元の動画がいつアップロードされたものかを確認します。 * 発信者のアカウント情報: 投稿者のアカウントが新規作成されたばかりであったり、過去の投稿が極端に少なかったり、特定のプロパガンダに偏っていたりしないかを確認します。
3. 周囲の状況との整合性を確認する
動画に映し出されている内容が、客観的な事実や常識と合致するかどうかを確認します。
確認するポイント: * 背景や季節: 動画の背景に映る建物、交通標識、街路樹の葉の状態などから、撮影された場所や季節を推測し、投稿された情報と矛盾しないか確認します。 * 服装や天候: 登場人物の服装が、その時期や場所の気候に合っているか、動画内の天候が実際にその場所で報じられているものと一致するかなども手掛かりになります。
共通の確認ポイントと注意点
画像や動画の真偽を確認する際に、共通して心に留めておきたい点があります。
1. 情報源の信頼性を確認する
どんなに魅力的な情報でも、その出所が不明確であったり、信頼性に欠けたりする場合は注意が必要です。
- 発信者の確認: 投稿しているアカウントが公式機関や信頼できるメディアのものか、あるいは個人のアカウントであれば、過去の投稿内容やフォロワー数、活動履歴などを確認します。
- ウェブサイトの確認: もし画像や動画が特定のウェブサイトからの引用であれば、そのサイトが信頼できる情報源であるか(例: 報道機関、学術機関、公的機関)を確認します。怪しいURLや広告が多いサイトは避けるべきです。
2. 複数の信頼できる情報源と照合する
一つの情報源だけに頼らず、複数の異なる情報源で同じ内容が報じられているかを確認する「情報の交差確認」は、ファクトチェックの基本です。
- 信頼できるニュースサイト: 大手新聞社、テレビ局、通信社などのウェブサイトで、関連するニュースが報じられていないか確認します。
- 公的機関の発表: 災害や健康情報などについては、政府機関や地方自治体、専門機関(例: 厚生労働省、気象庁)の公式発表を確認します。
- 専門家の見解: 専門知識を要する情報の場合、その分野の専門家が発信している情報や論文を参照することも有効です。
3. AI生成コンテンツの可能性も考慮する
近年、AI技術の発展により、本物と見分けがつきにくい画像や動画が生成されるようになっています。
- ディープフェイク(Deepfake): AIによって作成された、まるで本物の人物が話しているかのような動画です。表情や話し方に不自然な点がないか、背景との馴染み方などを注意深く観察します。
- AI生成画像: 存在しない人物や風景がリアルに生成されることがあります。特に人間の指や歯、耳などの細かい部分に不自然さが見られることが多いです。
まとめ
SNSで目にする画像や動画の真偽を確かめることは、容易なことばかりではありません。しかし、ご紹介したような実践的なステップを一つずつ試すことで、誤った情報に惑わされず、より正確な情報を得られるようになります。
大切なのは、「これは本当だろうか」と一度立ち止まって考える習慣を持つことです。完璧な情報検証は難しいかもしれませんが、焦らず、複数のツールや情報源を活用して多角的に確認する姿勢が、情報リテラシーを高める第一歩となります。このページが、皆様が日々の情報と向き合う上での一助となれば幸いです。